はじめに:表に出にくい“見えない犯罪”
日本では年間数千件以上の盗撮事件が摘発されており、警察庁の統計では検挙件数は増加傾向にあります。
防犯カメラやスマートフォンの普及で摘発例は増えましたが、実際には被害が届け出られないケースも多く、氷山の一角と言われています。
「やめたいのにやめられない」「誰にも相談できない」。
私たちはこれまで、盗撮行為に及んだ人を“意思の弱い犯罪者”とだけ捉えがちでした。
しかし実際には、**強い衝動に苦しむ“行動依存症”**としての側面を持つことが、近年の研究で明らかになっています。
この現実を直視せず「一部の異常者の問題」と片づけるだけでは、被害は減りません。
被害者をこれ以上増やさないために、加害行為をやめたいと悩む人を支える仕組みが必要です。
盗撮衝動は“行動依存症”である
依存症と聞くとアルコールや薬物を想像する方が多いでしょう。
しかし近年注目されているのは、**物質を介さない「行動依存症」**です。
ギャンブル依存、ネット依存、過食などが代表例で、盗撮もその一種と考えられています。
脳の報酬系が作る悪循環
人は強い快感を得ると、脳内でドーパミンが分泌され「もう一度」という欲求が生じます。
盗撮の場合、偶然の成功体験やスリルがこの報酬系を刺激し、
「自分だけは捕まらない」という誤った学習が繰り返されます。
その結果、理性ではやめたいと思っても衝動が先に動く状態に陥るのです。
“意思の弱さ”ではなく病理
依存症は単なる自制心の欠如ではありません。
神経科学的には、前頭前野(理性を司る部位)の抑制機能が弱まり、
報酬系の過活動が衝動を強化することがわかっています。
つまり「強い意志さえあればやめられる」というのは誤解です。
匿名のケーススタディ
以下は学会報告や新聞記事を参考に一般化した事例です。
30代男性・会社員
ストレス発散目的で動画撮影に手を出し、
最初は一度きりのつもりが回数が増加。
「捕まるかもしれない」という恐怖と「やめられない」衝動の板挟みで苦しみ、
最終的に専門外来を受診。
認知行動療法を続け、再発の防止を維持しています。
20代学生
孤独感が強く、SNSで過激な画像を消費するうちに
盗撮願望が芽生えた。
初犯で補導され、家族に付き添われて依存症外来へ。
トリガーとなる状況を日誌に記録し、
「衝動の波は数分でピークを越える」ことを体感。
現在は大学を卒業し、ピアサポートグループの運営にも関わっています。
これらは特別な例ではなく、
多くの当事者が“やめたいのにやめられない”苦しみを抱えている現実を示しています。
回復へのステップ:自己受容と自己変革の循環
盗撮衝動からの回復は、一直線の成功ではなく、
自己を受け入れ、変革を試み、また受け入れるという
螺旋的なプロセスの連続です。
失敗や停滞も“回復の一部”として扱うことが、長期的な再発防止につながります。
1. 自己受容──「衝動がある自分」を否定しない
最初の関門は、衝動を抱える自分を否定せずに認めることです。
「犯罪者だから自分は価値がない」と自罰的に捉えると、
孤立や絶望が深まり衝動が強まることがあります。
「衝動はあるが、私はその衝動を理解し、向き合える人間だ」と
自分の存在そのものを受け止める姿勢が、次の変革の土台になります。
2. 自己変革──小さな行動実験
自己受容のうえで、行動のパターンを少しずつ変える段階です。
- 衝動を感じたら5分間だけ深呼吸する
- 誘発する状況(飲酒、長時間の孤独)を1つ減らす
- 衝動のピークを「波」として紙に記録する
こうした小さな行動を積み重ね、「衝動は必ず収まる」という成功体験を増やします。
3. 再評価と再受容
小さな成功や失敗をジャッジせず振り返る時間を持ちます。
「昨日は我慢できた」「今日は失敗した」——
どちらも自分を理解する材料であり、
再び自己受容に戻って次の変革へつなげます。
ここでの“失敗”は挫折ではなく、学習データです。
4. 支援者とともに歩む
この循環を一人で続けるのは困難です。
オンライン支援や専門カウンセリング、ピアサポートの仲間は、
再評価と再受容を客観的に支え、
「変革→受容→変革…」のサイクルを安定させます。
私たちのオンライン支援サービス
このような背景を踏まえ、
私たちは匿名で参加できるオンライン回復支援を始めました。
目的は加害行為を一件でも減らし、被害者を守ることです。
専門機関へ行く前の“第一歩”として
私たちのサービスは、専門医療や公的支援を代替するものではありません。
しかし「病院に行く勇気が出ない」「家族に知られたくない」という方が多いのも事実です。
私たちはそんな方々が最初に気持ちを整理し、盗撮行為の自己停止を目指します。
そのため私たちは、まず「安全に話せる場所」を提供し、
自己受容と自己変革を繰り返しながら回復をめざすステップを
民間認定の心理カウンセラー資格を持つサポーターが支援します。
日次セルフチェック(Discord)
- 🟥盗撮行為をしてしまった
- 🟨強い衝動があったが我慢できた
- 🟦軽い衝動を感じたが問題なく過ごせた
- 🟩衝動を感じなかった
参加者は毎日この4色のいずれかを選び、
「なぜそう感じたのか」「どんな状況だったか」を短く記録します。
音声でのオンライン面談
希望者には面談を行い、あなたの衝動を理解したうえで
衝動と向き合う方法について一緒に考えるサポートを行います。
匿名・安全な運営
- ニックネームのみで参加可
- Stripe決済による安全な支払い
- 相談内容は暗号化して保管
- ただし生命・身体への危険がある場合は警察・専門機関へ連絡の可能性があります。
社会的意義と、盗撮行為を行なっているあなたへ
盗撮は被害者に深刻なトラウマを与えます。
「理解すること」と「許すこと」は全く別です。
私たちが依存症としての側面を理解し、
“やめたい”と苦しむ人を支援することは、
被害者を守るために不可欠です。
もしあなたが衝動に悩み、
「このままではいつか取り返しのつかないことになる」と感じているなら、
今が行動する時です。
一歩を踏み出す勇気が、
あなた自身の人生と、これから生まれるかもしれない被害を救います。
まとめ
- 盗撮衝動は意思の弱さではなく行動依存症として理解する必要がある
- 依存症は専門的な治療や支援を受けて改善を目指せる場合があります
- 私たちのサービスは専門機関に行きづらい方が第一歩を踏み出すための“補完的支援”
- 匿名で取り組めるオンライン支援は、再犯防止と被害抑止に有効
- 加害行為を決して容認しない姿勢が、被害者を守り社会を安全にする
あなたの「やめたい」という気持ちは、
社会全体を守る第一歩です。
どうかひとりで抱え込まず、私たちや専門機関に相談してください。・